SES(エンジニア派遣・準委任)への影響と、今後ニーズが高まると考えられるITエンジニア像について

みずほ銀行様の『みずほ産業 調査79号 本産業の中期見通しー向こう5年(2026ー2030年)の需給動向と求められる事業戦略』では、多岐にわたる産業を広範に分析しておられます。SESについてシステム開発をとりまく現状をこちらの資料からまとめたいとおもいます。
SES業界全体としては市場拡大の追い風を受けますが、「労働集約的な単純開発」の需要は減少し、「高度な専門スキル」を持つエンジニアへの需要へと二極化が進むと予測されます。

1. SES事業会社への影響:拡大と選別の時代へ

資料によると、国内の情報サービス市場は2030年にかけて年率+8.8%という高い成長率で拡大し、33.7兆円規模になると予測されています 。
これはSES事業にとって大きなチャンスですが、同時にビジネスモデルの転換点でもあります。

[追い風(ポジティブ要因)]
・モダナイゼーション需要の継続: 古いシステムの刷新(レガシーマイグレーション)やクラウド移行の需要が底堅く、当面はSI(システム構築)支援の引き合いが強い状態が続きます 。

・セキュリティ需要の爆発的拡大: サイバー攻撃の高度化により、セキュリティ関連サービスの需要は2025年に前年比+18.6%、中期的に年率+13.1%と急成長します 。
ここは人材が圧倒的に不足しており、高単価が見込める領域です。

[逆風(リスク要因)]
・「人月商売」の限界: 生成AIによるコーディング自動化が進むことで、テスターや初級プログラマーのような「労働集約的サービス」は代替されるリスクがあります 。

・顧客の内製化: 生成AIを活用してユーザー企業自身が開発を行う「内製化」が加速するため、外部(SES)に丸投げする案件が減少する可能性があります

2.今後ニーズが急増する「3つのエンジニア像」

1. クラウド・アーキテクト(モダナイゼーションの中核)

レポートでは、企業のシステム基盤が「クラウドネイティブ」へ変化し、オンプレミスからクラウドへのシフト(モダナイゼーション)が継続すると予測されています 。 単にクラウドサーバーを立てるだけでなく、「古いシステムをどうクラウドに最適化して載せ替えるか」を設計できるアーキテクトクラスの人材へのニーズは、セキュリティ同様に極めて高いです。

具体的なニーズ:
・レガシーシステム(古い基幹システムなど)のクラウド移行設計
・コンテナ技術(Kubernetes等)を活用したマイクロサービス化の設計
・クラウド特有のコスト管理やガバナンス設計

クラウド・モダナイゼーション人材
企業のシステム基盤が「クラウドネイティブ」へ移行する中で、単にクラウドを使えるだけでなく、古いシステムを新しい基盤へ載せ替えるスキルが重宝されます。

求められるスキル:
・AWS/Azure/Google Cloud等のクラウド基盤構築・設計
・レガシーシステム(オンプレミス)からクラウドへの移行経験
・コンテナ技術(Docker/Kubernetes)やマイクロサービスアーキテクチャの知見

2. AI活用・DXコンサルタント/実装エンジニア(「作る」から「使う」支援へ)

生成AIの普及により、システム開発の一部が自動化される一方で、「どう業務にAIを組み込むか」を提案・実装できる人材の価値が高まっています 。 これは従来の「言われたものを作るプログラマー」ではなく、顧客の業務課題を理解し、AIソリューションを提案するコンサルティング能力を持ったエンジニア(ビジネスアーキテクトに近い層)へのシフトを意味します。

求められるスキル(生成AI活用・実装エンジニア):
・生成AIを活用したシステム開発(API連携、RAG構築など)
・AIを用いたサイバー脅威分析やリスク対応の自動化
・顧客の業務課題をAIでどう解決するか提案できるコンサルティング能力
※AIそのものを開発する研究者ではなく、既存の業務システムに「生成AIを組み込んで業務効率化を実現する」エンジニアのニーズが高まります。

具体的なニーズ:
・顧客業務への生成AI導入コンサルティング
・社内データのAI活用基盤(RAG等)の構築
・AIを活用した業務プロセス改革(BPR)の支援

3.セキュリティ・スペシャリスト(守りの要)

サイバー攻撃の巧妙化に伴い、開発段階からセキュリティを考慮する「DevSecOps」や、サプライチェーン全体のリスク管理ができる人材が求められています 。
市場成長率が最も高く、かつ人材不足が深刻な領域です。単なる設定作業だけでなく、運用・監視まで行える人材が求められています。

求められるスキル(セキュリティ・エンジニア):
・ゼロトラストセキュリティの設計・構築
・MDR(脅威の検知とインシデント対応)の運用経験
・サプライチェーン全体を考慮したリスク管理

まとめ

レポートの予測に基づくと、SES事業としては、単なる「セキュリティ特化」だけでなく、以下のような広範な「高度化」が生存戦略になります。

①「労働集約型」からの脱却:生成AIによる自動化で代替されやすい「単純なコーディング」や「テスト要員」の案件は減少リスクがあります 。

②「上流・専門特化」へのシフト:「クラウド設計ができる」「AI導入の提案ができる」「堅牢なセキュリティ構築ができる」

これらいずれかの強みを持つエンジニア(=高度IT人材)を育成・採用し、高単価な準委任契約(コンサルティングやPM支援)を狙う方向性が、市場の成長トレンドと合致します。

「技術力+提案力(コンサルティング力)」を兼ね備えた人材こそが、今後SES業界で最もニーズが高まる「広義の高度IT人材」と言えます。

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