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データベース(DB)とは?:RDBからベクターDBまで、技術選定の勘所を徹底解説

現代のシステム開発において、データベース(DB)は単なる「データの永続化先」ではありません。システムのパフォーマンス、拡張性、そしてデータ整合性の命運を握るアーキテクチャの心臓部です。

本記事では、SES業界で数多くのプロジェクトを支えるエンジニアに向けて、実務で差がつくデータベースの深い知識を、理論と実践の両面から解説します。


1. データベースの本質:なぜ「ただ保存するだけ」ではダメなのか

初学者は「データを保存し、取り出せれば良い」と考えがちですが、シニアエンジニアは「データ整合性のコスト」と「アクセスパターンの最適化」という観点でDBを捉えます。

1.1 ACID特性の再定義

RDBMS(関係データベース)の根幹を成すACID特性は、分散システムが主流となった現在でも、信頼性を測る絶対的な指標です。

  • Atomicity(原子性): 「全て実行されるか、全く実行されないか」。
  • Consistency(一貫性): 制約(一意制約、外部参照制約)に違反しない状態を保つ事。
  • Isolation(独立性): 並行実行されるトランザクションが互いに干渉しない事。
  • Durability(永続性): 完了したトランザクションはシステム障害が起きても失われない事。

1.2 分散システムとBASE特性

マイクロサービスやグローバル規模のサービスでは、ACIDをあえて妥協し、BASE(Basically Available, Soft state, Eventual consistency)特性を選択する場面が増えています。ここでは「結果整合性」という、分散DB特有の概念が重要になります。


2. 理論的背景:技術選定のコンパス

エンジニアがDBを選ぶ際、感情や好みではなく「理論」で判断するために必要なのがCAP定理PACELC定理です。

2.1 CAP定理:分散システムのジレンマ

分散システムにおいて、以下の3つを同時に満たすことはできないという定理です。

  • C (Consistency): 一貫性
  • A (Availability): 可用性
  • P (Partition Tolerance): 分断耐性

現代のインターネット環境では、ネットワーク分断(P)は避けられないため、実質的には「CP(一貫性重視)」か「AP(可用性重視)」の選択を迫られます。

2.2 PACELC定理:さらに現実的な視点

CAP定理を補完する概念として、ネットワーク分断時(P)の挙動だけでなく、通常時(E: Else)のレイテンシ(L)と一貫性(C)のトレードオフを論じるのがPACELCです。「普段のパフォーマンスを優先するか、常に最新データが見えることを優先するか」を定義します。


3. データベースの内部構造:ストレージエンジンの世界

技術者のレベルを分けるのが、DBの「裏側」の仕組みへの理解です。

3.1 B-Tree vs LSM-Tree

DBがデータをディスクにどう書き込むかによって、得意な処理が異なります。

  • B-Tree(およびB+Tree): PostgreSQLやMySQLのデフォルト。読み取り効率が極めて高く、範囲検索に強い。
  • LSM-Tree (Log-Structured Merge-Tree): CassandraやRocksDB、Amazon DynamoDBなどで採用。書き込みが高速で、ログ形式でデータを積み上げる。

3.2 実行計画(Execution Plan)を読み解く

EXPLAINコマンドの結果を見て、インデックスが適切に使われているか、シーケンシャルスキャンが発生していないかを確認できるスキルは、パフォーマンスチューニングの必須技能になってきます。


4. DB分類:ユースケース別徹底比較

主要DBを簡単に分類します。

カテゴリ代表的なDB最適なユースケース技術的特徴
RDBMSPostgreSQL, MySQL基幹システム、EC、SNS強固なACID、SQLによる複雑な集計
NoSQL (Document)MongoDB, Firestoreモバイルアプリ、CMSJSONライクな柔軟性、高いスケーラビリティ
NoSQL (KVS)Redis, Memcachedキャッシュ、セッション管理メモリ上での超高速動作
NewSQLTiDB, Spanner大規模グローバル決済RDBの整合性とNoSQLの拡張性を両立
Vector DBPinecone, MilvusLLM、RAG(検索拡張生成)高次元ベクトルの類似性検索(後述)

2大RDBMSの比較:PostgreSQL 17 vs MySQL 8.4 LTS

オープンソースRDBMSの双璧も、2025年現在はさらなる進化を遂げています。かつては「速度のMySQL、機能のPostgres」と言われましたが、現在は両者ともに進化し、単純な優劣はつけられません。しかし、内部実装を紐解くと、技術選定の決め手となる決定的な差が見えてきます。

4.1 アーキテクチャの根本的な違い

  • PostgreSQL 17:さらなる堅牢性と高速化
    2024年後半にリリースされたPostgreSQL 17では、真空(Vacuum)プロセスのメモリ管理が大幅に改善され、大規模データの運用負荷が軽減されました。また、JSON対応が強化され、より柔軟なデータモデルに対応可能となっています。
  • MySQL 8.4 / 9.0:LTSモデルへの移行
    MySQLは8.4 LTS(長期サポート版)が登場し、エンタープライズ利用での安定性が向上しました。一方で9.0 Innovation版では最新機能が次々と試されています。Thread-basedアーキテクチャによる低メモリ消費は、大量のシンプルクエリを捌く環境で依然として強みを発揮します。

4.2 クエリ実行と最適化:JITコンパイルと並列クエリ

PostgreSQL 11以降で導入され、16でさらに洗練されたJIT(Just-In-Time)コンパイルは、複雑な計算を含むクエリにおいて劇的な高速化をもたらします。LLVMを用いてクエリ実行時にマシンコードを生成するため、大量データの集計処理(OLAP的なワークロード)において、PostgreSQLはMySQLを圧倒するケースが多いです。

また、ウィンドウ関数の充実度もPostgresに軍配が上がります。MySQL 8.0でもウィンドウ関数がサポートされましたが、PostgreSQLはRANGE句の柔軟性や、カスタム集計関数の定義において依然として高い自由度を誇ります。

4.3 JSON処理とデータ型

  • PostgreSQL: JSONB型によるインデックス(GIN Index)が非常に強力です。ドキュメントDBとしての側面も持ち合わせ、スキーマレスな運用にも耐えうる柔軟性があります。
  • MySQL: JSON型をサポートし、仮想列(Generated Columns)にインデックスを貼ることで高速化しますが、PostgresのJSONBほど直感的な検索や複雑な操作には向いていません。

5. クラウドネイティブDBの詳解:ストレージとコンピュートの分離

現代のインフラ設計において、AWS AuroraやGoogle Cloud SpannerといったクラウドネイティブDBの理解は欠かせません。これらが従来のRDBと決定的に違うのは、「ストレージとコンピュート(計算リソース)の分離」というアーキテクチャにあります。
AWS Aurora: 「ログがデータである」という思想のもと、ストレージ層を完全に分離。6方向レプリケーションにより、一部の障害が全体のパフォーマンスを阻害しない驚異的な可用性を実現しています。

Google Cloud Spanner: TrueTime(原子時計)を用いることで、CAP定理の壁を超えて一貫性と可用性を高次元で両立させた、分散SQLの最高峰です。

5.1 AWS Aurora:ログがデータである

従来のDBは、ストレージにデータページを書き込むだけでなく、バックアップやレプリケーションのためにRedoログなどを転送していました。これがI/Oのボトルネックとなります。 Auroraはこの常識を覆しました。コンピュートノードはストレージ層に対して「ログだけを送信」します。

  • ログ構造化ストレージ: ストレージ側でログを読み込み、データページを再構成(マテリアライズ)します。
  • 6方向レプリケーション: 3つのアベイラビリティゾーン(AZ)に2つずつ、計6つのコピーを保持。そのうち4つに書き込めれば成功(Quorum)とするため、一部のストレージ障害がパフォーマンスに影響を与えません。 この分離により、リードレプリカの追加が数分で完了し、コンピュートノードがクラッシュしてもデータ欠損のリスクが極めて低い設計となっています。

5.2 Google Cloud Spanner:分散SQLとTrueTime

Spannerは「CAP定理のC(一貫性)とA(可用性)を両立させている」と評される驚異的なDBです。

現在、エンジニア市場で最もホットなトピックはベクターDB(Pinecone, Milvus, Weaviateなど)です。これはChatGPTなどのLLM(大規模言語モデル)に社内データや最新知識を学習させずに参照させるRAG(Retrieval-Augmented Generation)に不可欠な技術です。


6. 実践:現場で役に立つDB運用・設計について

理論を知識として持つだけでなく、それを現場でどう活かすかがエンジニアの腕の見せどころです。

6.1 インデックス設計:カーディナリティの罠

インデックスを貼れば早くなる、というのは半分正解で半分間違いです。

  • インデックス設計の罠: カーディナリティ(値の種類)が低いカラムへのインデックスは、かえってオーバーヘッドを招きます。
  • N+1問題とORM: PrismaやTypeORMは便利ですが、発行されるSQLをEXPLAINで確認しないと、ループ内のSELECT発行でサービスを沈めます。
  • ゼロダウンタイム・マイグレーション: 1億件のテーブルにカラムを追加する際、サービスを止めない技術(gh-ostCREATE INDEX CONCURRENTLY)は、SRE/バックエンドエンジニアとしての最高の武器です

6.2 N+1問題とORMの適切な距離感

PrismaやTypeORMなどのORMは開発効率を上げますが、内部で発行されるSQLを意識しないと、ループ内で大量のSELECTを発行する「N+1問題」でサービスを沈めます。EXPLAINコマンドを使って、常に実行計画を確認する癖をつけましょう。

6.3 ゼロダウンタイム・マイグレーション

1億件のテーブルにカラムを追加する際、単純なALTER TABLEはサービスを止めます。

  • MySQLならgh-ostpt-online-schema-change
  • PostgreSQLならCREATE INDEX CONCURRENTLY。 これらの手法を使い分け、サービスを稼働させたままスキーマを更新する技術は、SREやバックエンドエンジニアにとって最高の武器になります。

7. データベース学習のロードマップ

データベースは、技術の流行り廃りが激しいIT業界において、最も知識の「賞味期限」が長い分野の一つです。10年前に学んだSQLの最適化技術は、今でも最前線で通用します。
イズムでは、こうした技術の本質を追求し、インフラからアプリケーションまで一気通貫で「質の高いシステム」を構築したいエンジニアを募集しています。

  1. Level 1(初級): 標準SQL、第3正規化、B-Treeインデックスの仕組み。
  2. Level 2(中級): 実行計画(EXPLAIN)の解読、トランザクション分離レベルの理解、デッドロックの回避。
  3. Level 3(上級): 分散DBのコンセンサスアルゴリズム(Raft/Paxos)、シャーディング、ベクターDBを用いたRAGの実装、クラウドネイティブDBのコスト最適化。

Udemyで学べるおすすめDB講座

ここまで解説した高度な理論(PACELCやLSM-Tree)を現実のコードに落とし込むには、まず「基礎という土台」を揺るぎないものにする必要があります。

「理論はわかったが、実際のSQLはどう書くべきか?」 そのギャップを埋めるために、株式会社イズムのエンジニアも活用しているUdemyの優良講座を紹介します。基礎を再定義することで、高度な設計思想がより深く理解できるようになります。

これから学習する方、実務レベルに伸ばしたい方におすすめの代表講座です。

・はじめてのSQL・データ分析入門(SQL入門)
https://www.udemy.com/course/standard-sql-for-beginners/

・3時間で学ぶ SQL・データベース 超入門(基礎から丁寧に学ぶ)
https://www.udemy.com/course/sql-begginer/

・SQL+データベース(DB)をちゃんと学ぶ講座(MySQL操作)
https://www.udemy.com/course/sql-basic/

・AWS Databases Crash Course – RDS, Aurora & DynamoDB
https://www.udemy.com/course/awsdatabase/

・PostgreSQL AWS RDS Essential Training
https://www.udemy.com/course/postgres-rds/


イズムなら「案件」×「Udemy」で段階的にスキルアップできる

イズム(ISM-SOL)は、“キャリアアップ重視型SES” を掲げています。
ただ現場に出るだけではなく、

現場案件で高度な設計に触れる
Udemyで理論を体系的に補完する
・メンターと共に市場価値を分析し、年収アップを狙う

という、学びと実務が連動した成長モデルを実現しています。

特にDBは、
・要件定義に関わりたい
・設計エンジニアを目指したい
・上流工程で活躍したい
という方に必須スキルです。

「ただの作業要員」ではなく、「アーキテクチャから語れるエンジニア」へ。DBの知識は一度身につければ10年、20年と通用する、最も賞味期限の長い武器になります。

正しい知識と学習環境さえあれば、あなたの市場価値は着実に高まります。
イズムは、挑戦を続けるエンジニアの未来を共に育てていく存在でありたいと考えています。
「案件で必要 → Udemyで学ぶ → 現場で活かす → 次の案件でさらにレベルアップ」
という“スキルが循環して成長していくキャリア設計”を支援しています。

ただの“作業要員”では終わらせない。
“学び続け、市場価値を高めるエンジニア”として、一緒にステップアップしていける環境が整っています。

まとめ

・DBはシステムの基盤となる重要技術
・用途に応じて種類と特徴を理解することが重要
・Udemyを活用すれば体系的かつ効率的に学習が可能
・イズムでは「案件×Udemy」で確実にスキルアップできる

これからDBスキルを伸ばしたい方、キャリアを本気で高めたい方へ。正しい知識と学習環境が整っていれば、エンジニアとしての市場価値は着実に高まっていきます。イズムは挑戦と成長を続けるエンジニアを支え、その未来を共に育てていく存在でありたいと考えています。

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